「利用可能」という意味で広く使われている、「ご利用いただけます」という文句にいつもモヤっとする。
【「出来ます」の敬語は「いただけます」だ。】と断言しているサイトも沢山あるが、これは明らかに誤用だ。
「いただく」という言葉は「もらう」の謙譲語のため基本的に自分にしか使えない。
したがってこの文は「私はお客様に○○をご利用いただけます」の「私はお客様に」を省略したものなのだ。
この文の敬語表現を取っ払ってみると、「私は客に○○を利用してもらえる」となり、もっと言うと「私は客に○○を利用してもらうことが出来るよ!」と主張しているのだ。
例えば、
「このクーポンは31日までご利用いただけます。」は、
「私は客にこのクーポンを31日まで利用してもらうことが可能。」の言い換えなのだ。だっていただくは謙譲語だから。
はっきり言って不自然である。
この場合はクーポンを主語にして「クーポンは31日まで利用可能」にしたり、
客を主語にして「お客様はクーポンを31日までご利用になれます」とするのが自然。客側の目線で話すのが普通であろう。
「ご利用いただきます」は多くの場合主語を「客」として使っているのが問題なのだ。
ほとんどが「お客様はご利用いただけます」と言う感覚で使用されている。「ご利用いただく」を客の動詞として使っている。
正しく言うなら「お客様はご利用になれます」や「お客様のご利用は可能です」なのだ。
しかし昨今はこの誤用が広まってしまって、大企業も平気でテンプレートのように使っている。終わった。完全に。どうやってもこの牙城は崩れそうにない。
そんなことを思いながらネットで「いただけます」を検索していたら2007年時点でこの状況を危惧していた記事を発見。
(一部抜粋)
「○○してもらいます」の謙譲語が「○○していただきます」
「○○してもらえます」の謙譲語が「○○していただけます」「○○してもらえる」とは、どういう意味だろうか? 「○○してもらうことができる」ということである。
さて、最初に例に出した「ご利用いただけます」であるが、これは「利用してもらえます」の謙譲語である。たとえば、店が客に対して使う以下のような表現
各種割引券を、ご利用いただけます。
は、
各種割引券を、利用してもらえます。
の謙譲表現である。果たして、ここまで読み進んでくれた読者には、この一文がいかに意味不明で変な日本語かをお分かりいただけただろうか(笑)。
そうそう、そういうことなのよ。詳しくはリンク先に記載されているが、「利用してもらえます」は意味不明なのよ。こういう理屈をすっ飛ばして【「出来ます」の敬語は「いただけます」です!よく使うので覚えておきましょう♪】なんてサイトが蔓延っている現状はどうにかしたいものだ。
「ご利用になれます」という綺麗で文字数も省エネな言葉があるのに何故そちらを使わないんだよ!!
もしかして「なれますじゃなくていただけますだろ!」ってクレーム入れる人がいるのかも・・・
追記 2021-04-24
ある企業からのメールでこんな一文を発見した。
当日イベントにご参加いただきたい方は確実にイベント参加登録フォームへのご記載をお願いいたします。
明らかにおかしい。
参加して欲しいのは企業側なので「ご参加いただきたい方」というのは自分(企業)になる。変だ。
そうか、【希望・願望の表現「~たい」】をつけることで正誤がわかるのかも知れない。
この場合は「当日イベントにご参加になりたい方は確実に~」とすれば良い。
余談だが、「本日はご参加いただきありがとうございます」という文も実は変だ。
「参加してもらってありがとう」とは普通言わない。
参加してもらうのは自分で参加してくれるのは相手だ。
よって「参加してくれてありがとう」が自然だ。小学生でも使い分けができている。
「参加してもらってありがとう」を使うなら「参加してもらって〇〇と感じた。ありがとう。」となにか一つ加えるべきだ。
なのでこの場合は「本日はご参加下さりありがとうございます。」か「本日は皆様にご参加頂き素敵な会になりました。ありがとうございます。」とするのが本来は自然なのだ。
まあこれも正として広まってしまったがね・・